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藤田教授


Special Interview 3
応用数学・コンピュータ科学分野
数値流体力学専門 藤田昌大教授

コンピュータ科学は見えないモノづくりである

――藤田先生は、コンピューター科のどんなところに魅力を感じていますか?

藤田先生

おっと、直球ですね(笑)。ひとことで返すと、私にとっては「モノづくり」です。もともと工学部の出身ですから、モノづくりが大好きなんです。
――数学とモノづくりって、あまるピンと来ないんですが。

藤田先生

私はずっとコンピューター科学のなかで「流体力学」をキーワードに研究してきました。学部の頃は船舶工学、大学院では航空工学と、比較的大きなスケールの水や空気の流れを扱いましたが、最近ではナノ・マイクロサイズの流れが中心です。
たとえば浄水に必要な膜ろ過流れなどは非常に小さい世界なので、電子顕微鏡で見るほかなく、膜の細孔が閉塞する過程までは、実験ではとてもわかりません。
――はい。

藤田先生

そこで用いるのがコンピューターシミュレーションです。例えば汚水に含まれる微細なゴミがどんな風に膜を通過するのか、経時変化や詰まり具合などを予測して改良を繰り返す。つまりコンピューターの中で、“見えないものづくり”を行うのです。
――なんとなくイメージが浮かんできました。

藤田先生

そしてコンピューターへの指示はすべて数式で記述されています。数式を使ってコンピューターに命令するには、数学と情報通信技術、この2つの理解が不可欠なのです。

【FOCUS】コンピュータ上で、ドローンをリアルに飛ばすには?

数学の知識をもとに、コンピュータシュミレーションでどんなことができるか。体験授業などでしばしば取り上げているのは、「コンピュータの中でドローンを飛ばす」シミュレーションです。ドローンは4つのローターの回転速度を変えるだけで、自動運転も含めて比較的簡単に操縦できるので、ヘリコプターと比べて再現しやすいのです。しかしコンピュータの中で本物のように飛行させるには、流体、つまりここでは空気の動きを解かねばなりません。このような流体の方程式を解くシミュレーションは、人工物の設計や自然現象の予測などのさまざまな分野で役立っています。
――“空気の動き”のシミュレーションについて、ほかにはどんなものがありますか?

藤田先生

私の研究成果からひとつ紹介すると、ロケットの着陸シミュレーションです。下の動画は、垂直着陸ロケットの逆噴射ジェット流れのシミュレーションを行ってアニメーションにしたものです。
――計算結果を可視化して、ジェット気流をCGで再現しているんですね!

藤田先生

CGの発達はすさまじく、今やCGで描く静止画のほとんどが実写と変わらないレベルに達しています。ただ、動画となると、それを本物のように見せるには、“動き”をリアルに表現することが重要です。
例えば、コップ一杯に注いだ水は、表面張力によりなかなか溢れません。こうした水の動きを緻密に計算してアニメーションにしたのが次の動画です。
――なんだかとてもリアルに感じます。

藤田先生

適当にアニメーションを描くのではなく、数式を用いて水の動きをシミュレーションすることによって、限りなく本物見せることが可能になります。このような流体の運動を扱うCGは、最近の映画の中でも多様されています。
――映画のCGっていま、本当にリアルですよね。

藤田先生

ですからCGクリエイターを目指すにしても、これからはますます、数学と情報処理に強い人が有利ですね。私のセミナーでも例年、数学と情報技術を用いて流れをシミュレーションするソフトウェアを1年かけて作成しています。

さまざまな産業に数学と情報技術の知見が重宝

数学と情報通信技術は、今や様々な産業分野で求められる知識です。私の研究分野で言うと、例えば「塗装」は色々な産業で使われています。塗装とは簡単にいうと液体を蒸発・乾燥させ、そこに混ぜた小さな固体粒子を表面にくっつけることで,建物の外壁から化粧品まで広く用いられています。どのように塗るか、どんな速度で乾燥させるかといった塗装の技術は、これまで職人的な「勘」に頼る部分が大きかったのですが、特に化学工学を中心とする産業分野では、誰でも失敗が少なく、かつ効率的にできるよう、数理モデルを使ってそれを予測するという研究が進んでいます。
――藤田先生も数理モデルを産業応用されたことはありますか。

藤田先生

以前のことですが、大手化粧品メーカーと女性用のファンデーション開発に関する共同研究を行いました。ファンデーションというのは、プロのメイクアップアーティストと素人では、同じ商品を使っていても仕上がりにすごく差が出ますよね。
なぜプロだとうまくできるのか。誰でもキレイに塗ることができるファンデーションを開発したいというメーカーの依頼を受け、プロのやり方を数理的にシミュレーションして解析しました。
――実用的ですね!数学の見方が変わりそうです。

藤田先生

コンピューター科学とは実社会の産業応用につながるものですから、本来は「出口」はかなり広いんです。
数学を学ぶというと、将来は数学の先生か数学者しかない、と考えがちですが、まったくの勘違い。事実、私のセミナー生もほとんどが民間企業、ICT系の会社に就職しています。
――藤田先生は就職委員もされていらっしゃいましたね。

藤田先生

はい。その経験を踏まえて言うと、企業の採用では数学科の出身だから最初からお断り、ということはまずありません。
何度も繰り返しますが、どんな分野でも数学と情報通信技術は重要ですから。かえって工学部では、例えば建築学科の出身だと、電機メーカーなど畑違いの業種に就職することは難しいでしょう。専門特化ゆえの副作用ですね。
――逆に、数学科の学生は間口が広い。

藤田先生

入口はどこもオープンです。保護者の方には「潰しがきく」と言ったほうがピンと来るかも。就職活動についてはキャリアサポートセンターの有資格者(キャリアコンサルタント)が学生一人ひとりを懇切丁寧にフォローしています。
並行して2年生から4年生まで就職ガイダンスを行うほか、マナー講座なども開いているので就職支援はとても手厚いですね。

【FOCUS】都心のメリットを十分にいかす東京紀尾井町キャンパス

東京紀尾井町キャンパスは8年前にできました。そのときに「もっと応用数学に力を入れよう」ということで、さまざまな分野の第一線の研究者が集まりました.例えば「社会のいま」と関わるところでは、安田英典教授が感染症のモデリングとシミュレーションに取り組まれています。感染の拡大を数理モデルにして計算するもので、新型コロナウイルス感染症のニュースでもよく見かける数式です。また井沼学准教授は指紋などの生体認証を研究されています。生体認証はAIにデータを学習させて特定の人を認識するもので、AIが行う機械学習は現在たいへん注目されている分野です。低学年では広く大学数学の基礎を学び、高学年になるとそれぞれの先生のもとで応用数学の幅広い理論に触れられるのが、東京紀尾井町キャンパスの特色です。
――企業で働いたことのある藤田先生も、応用数学の担い手のおひとりですね!でもなぜ応用数学に主軸を置くのが、東京紀尾井町キャンパスなんですか?

藤田先生

東京紀尾井町キャンパスは都心のどまんなか。日本で一番国会議事堂に近いキャンパスです。テレビの国会中継はすぐそばで行われています(笑)。政治の中心は経済の中心でもあり、応用数学は産業応用と密に関連するので、企業などど連携するにも便利な立地だからです。
――なるほど。ICT企業も近くにいっぱいありますからね。今後はさらに産業連携、あるいは産学官と連携した研究も考えていらっしゃる?

藤田先生

もちろんです。そのためにも応用数学をやってみたい、という学生にたくさん来てほしいですね。モノづくりが好きな方も大歓迎です。
また、企業の多い都心にあり、交通アクセスも非常に便利というメリットは、スムーズな就職活動にも役立っています。複数の企業を訪問するにも効率的ですし、午前講義、午後から会社訪問とスケジュールも立てやすいです。
――企業と連携が活発になると、顔なじみの会社も増えそうですね!

藤田先生

いい質問です、それで大事なことを思い出しました。就職支援では特にインターンシップに力を入れていて、最近では2年生からインターンシップを募集する企業も増えてきたので、学生には「とにかく行きなさい」と背中を押しています。
教員を目指すにしても職業体験は大切で、初めて社会人ときちんと接するのが教員採用面接ではハードルが高すぎます。さまざまな企業や人とふれあえる、恵まれた環境のもとで成長してください!