2018.05.21
女性人材育成センター お知らせ
城西大学・城西短期大学 OGインタビューVol.05

経済学部経済学科の卒業生へインタビューをさせていただきました!

女性人材育成センター主催、OGへのインタビューシリーズです。
第5回目の今回は、経済学部経済学科のご卒業生の方へ、同学部女子学生サークルの学生さんがインタビューを実施してくれました。



※本インタビューについては、プライバシーの関係上、学生、教員等の氏名表記はしておりません。ご了承ください。

経済学部生 OGインタビュー

今回インタビューを行ってくれた
経済学部女子学生サークル「Daisy」の代表と副代表のお二人

教員A「今日は1994年に経済学部をご卒業されたH先輩にお越し頂きました。Hさんはバブル崩壊直後にご就職され、さらにご家族の都合による退職を経て再就職されました。人事畑の要職に就き、ご多忙な中、様々な検定試験を取得しつつ、卒業生として城西大学の就活ガイダンスなどにもご協力下さっています。それでは、経済学部女子同好会デイジーからのインタビューを始めさせて頂きます。」


Y「今日はお時間頂きありがとうございます。経験豊富な女性の先輩に色々なお話をうかがうのを楽しみにしてきました。バブル直後の就職氷河期での就職活動や、転職のご経験もおありのようですので、その辺りについてもうかがえればと思います。」


H先輩「はい。よろしくお願いします。」

 

 

就職と転職

 

X「最初のご就職はD社(娯楽産業)とのことですが、就職の時の話を教えてください。」

 

H先輩「はい。まず就活を始めるにあたって、バブル期とは一転、非常に厳しい状況であることをゼミの先輩たちからうかがいました。でも変化が急過ぎたために、正直なところ、「大変な就活」の意味も対策方法も分かりませんでした。銀行が採用人数を大幅に減らした今年、なんとなく当時の空気を思い出します。統廃合が進んで駅前の支店の数がどんどん減って。」

 

X、Y 「え〜。オリンピックまで売り手市場が続く、という話は聞きますけど。」

 

H先輩「今から考えると何が良くて何が悪かったのか…。バブル入社組は今、リストラの対象になっていますし、就職氷河期を乗り越えて入社し、どんどん活躍していくこともできると思いますよ。」

 

X「入社後に苦労されることはあったでしょうか?」

 

H先輩「娯楽産業のマーケットは携帯電話が流行するまでとても大きかったので、バブル崩壊後でも順調に業績を伸ばし、給与の点でも恵まれていました。家族的な雰囲気の社員寮も完備されていたため安心して働くことができました。私は家族の病気をきっかけに退社し、携帯電話関係のA社に転職しましたが、こちらも幸いなことに業界として、不況の煽りに苦しむことはありませんでしたね。」

 

X「転職についてよく3年働いてから、という話を聞きます。これについてはどうお考えですか?」

 

H先輩「何のための転職かによると思います。」

 

X「私は自分との相性を試すのは1年くらいでいいかと思ってしまうのですが。」

 

H先輩「そもそも新卒採用後、1年間の経験で見事に能力を高めて、よその会社で自分を高く売ることができると思いますか?大学生がイメージする仕事って「上司から割り振られたことをこなす」という感じじゃないでしょうか。でも私のこれまでの25年くらいの経験の中で、そういう仕事をしていた期間はごくわずかで、ほとんどの時間は先輩としてあるいは上司としての働きが 求められました。1年目に最低限の仕事を覚えて、2年目に後輩育成を経験し、3年目にようやく役職について指揮命令をこなし、4年目に昇進試験を受けて合格して昇進し、何をやって何が上手くいき、何が上手くいかなかったか…。それがキャリアなんです。1年目の新人が社会人として頑張りましたといって、それを評価する企業があると思いますか?」

 

一同「うーん。」

 

H先輩「ブラック企業のように極端なケースを除けば、会社がどうというより、あなたの能力が足りないから1年で終わったのねと、取られてしまう可能性があります。それに転職は有休が一気に消えたり、退職金をため直したり、なかなか大変ですよ。」

 

Y「3年説はどうでしょう。3年以内離職率の調査もあるくらいですが。」

 

H先輩「一般に社会人生活は40年、50年と続くわけですよ。数年の仕事で、その企業や仕事について本当に理解できるでしょうか。そもそもそこを選んだ自分の理解は足りていましたか?ということにもなるし。会社とのミスマッチを起こしやすい人は、「自己分析」が足りていない印象があります。リクナビを眺めるだけじゃなく、学生時代にいろんなことをして、失敗/成功体験を積んで、自分とじっくり向かい合った上で、いろんな会社のOB、OGと話したり、インターンシップをやって、企業説明会に出て、という過程を経ずに就職を決めてしまうと正直厳しいと思います。今向き合えないと一生向き合えないし、一生いいと思う仕事は見つからないと考えて欲しい。動いていれば、すごい!と思える人にも出会うし、そういう人から学ぶことも多いですよ。」


 

城西生の就活

 

教員A「貴重なお話大変ありがたいです。就職の話、自己分析の話を受け流してしまう学生はとても多いです。なし崩しに就職して、数年で離職する人もいます。こういう話を真剣に受け止めて欲しいですね。」

 

H先輩「以前、別の城西の先生からも「一生懸命就活をするんだけど、数年でやめてしまう子がいる」というお話をうかがいました。産業カウンセラーやキャリアコンサルタントの勉強をしながら気付いたのは、城西生のモラトリアム期(注:学生時代など、肉体的に大人でも社会で一人前となることを猶予されている期間)における活動量の少なさが問題だと思っています。」

 

教員A「 のんびりしている、と。」

 

X「場所柄もあるかもしれない。東上線を下って行くと景色がのどかになって、ラフな服装が当たり前になってくる。大人もスーツを着ていない中、学生がリクルートスーツを着ていると目立つし、恥ずかしい。スーツを着るとピリッとした気持ちになるというのはわかるけど。大学には畳んで持ってくる人が多いかもしれない。」

 

H先輩「私たちの時には就活期にスーツで大学に行くのは当たり前でした。就活の合間にゼミにも出ましたよ。早々と3年生からスーツを着る恥ずかしさに耐えるのと、下の学年の就活期にまだスーツを着ているのでは、どちらがいいですか?」

 

X、Y「すぐ着ます!」

 

全員「笑」

 

H先輩「逆算すると3年の12月というのは就活をスタートさせる気持ちの切り替えのリミットですね。」

 

教員B「この時期は転職について考えるより、とにかく自分と向かい合って、一生懸命いろんな会社を調べて、訪問して話を聞いて、いい会社を見つけて、就職先でキャリアアップして行くことを考えるべきですよね。「就活を意識して日経を読んだり、いろんな企業について調べてみて、初めて世の中のことが見えたように感じられて楽しい」と言うゼミ生もいました。」

 

H先輩「就活もやってもやっても上手くいかなくて落ち込むこともありますが、夏頃になって、落ちても楽しいという心境になってくると決まる、と言う話も聞きます。自己分析と仕事理解(企業分析)が上手く行くようになってくるのかな。いい企業に決まるのを見てきました。」


 

女性と仕事

 

Y「話は変わりますが、仕事で女性への差別を感じることはありましたか?」

 

H先輩「私達の業界は力仕事が必要なわけではないので、仕事の面で男女差を強調されることはありませんでした。その中でも大変なのは「産休、育休明けの復帰」です。5連休しても新しい動きに戸惑うようなスピード感のある業界なので、1年半の休み明けはかなりの踏ん張りが必要になります。そこでとても重要なのが、パートナーの協力なんです。」

 

X、Y「おお。」

 

H先輩「みなさんアルバイト先などでママさんたちと接点ありますか?毎日大急ぎで家に帰りますよね?」

 

X、Y「はい。」

 

H先輩「延長料金がかからないように大急ぎで保育園へ迎えに行く必要があるんです。子供の手を引いて買い物を済ませて、家では洗濯機を回してから食事を作り、ご飯を食べさせてと大忙しなんですね。一度寝かしつけてもご主人の帰宅で目を覚まして、生活リズムを崩して保母さんにご迷惑をかけてしまったり…。そういう生活では、協力的なパートナーがいらっしゃることが大きな救いになるようです。例えば、平日に休みが取れるご主人がいれば、その日は子供の送り迎えや世話を任せられるんです。たまにはデパートに寄ってみたり、それが無理でも、子供の手を引かずにスーパーに寄って帰宅できる。」

 

Y「子育てが始まると自分の時間はなくなるのでしょうか?」

 

H先輩「 ママさんたちは復帰後の3、4ヶ月はホッとする時間がないとおっしゃいます。半年位すると、会社でお茶を飲む時間に少しホッとするという方もいらっしゃいます。そこでとても大切なのはどこに住むかということです。自治体によっては2人兄弟がバラバラの保育園へ振り分けられることもあるし、逆に3人いると全員同じ所に入れるという区もあります。」

 

X「別々の保育園…。間に合うのかなぁ。」

 

H先輩「私たちの業界はまだ朝が遅めなのでマシですが、それでも7時より前に家事を一通り終えるみたいです 。」

 

Y「私の母は専業主婦です。子育てが一段落してからパートを少しやった程度ですが、今結婚を視野に入れた姉が仕事を続けるか悩むのを見て、「今後の経済状況次第だからあなたもそのつもりでいなさい」と言われました。自分は子供に寂しい思いはさせたくないから、もし子供を持つことがあれば、経済状況次第では、フルタイムではなくパートを選択したいと考えています。」

 

X「私の家は共働きですが、亭主関白で、仕事も家事も頑張る母の姿を見てきました。いつも疲れているし、ふざけて「子供たちがいるから私の時間はない」と言われたこともあります。でも好きな仕事を一生懸命頑張る姿を見て、自分も仕事はずっとやりたいと思っています。」

 

H先輩「大変ですよね。育休明けの皆さんに、ここまで大変になることを想像していた?と聞いてみると、 「大変だと想像はしていたけど、ここまで大変だとは思わなかった」とおっしゃいます。」

 

教員A「こういうお話をうかがうと、復帰後のママの生活について具体的なイメージをもてるようになりますね。今後、女性の社会進出はさらに進むと思いますが、依然として「M字カーブ」(出産・育児期に当たる30代で女性の就業率が落ち、子育てが一段落した後に再就職する人が多いこと) の問題には解決の糸口が見えません。」

 

H先輩「はい。それでも、復帰前にパートナーと「子供のいる生活の役割分担」について細かく話し合って合意ができているかどうかで、大きく苦労が変わってくるということがデータ(平成26年内閣府「ワーク・ライフ・バランスに関する個人・企業調査報告書」)からも、職場の女性社員の話からも分かりました。」

 

教員A「逆にいうと、協力的な祖父母やパートナーの支えがなければ、子育てをしながらフルタイムで働くのは現状としてなかなか厳しいと考えざるを得ないわけですね。それでは育休明け復帰に成功する人、失敗する人の違いはどのようなところにあるのでしょうか?」

 

H先輩「うちの場合、妊娠でやめる社員は最近全くいません。育休も法律通りしっかり取れますが、カムバックの実態はなかなか厳しいです。私はキャリアコンサルタントの資格を取る勉強をしているのですが、そこで職場復帰を考える方の相談に乗ることがあります。彼女たちの最大の問題は「自信」なんです。以前の知識がすっかり過去のものとなり、職場では若い社員にゼロから新しい知識を教えてもらうことになります。復帰するママ達も30代であればそれなりの職業経験も積んだ人たちでプライドもあるので、そういった環境に適応して、ゼロから若い同僚に教えてもらう姿勢を持つのはなかなか大変のようで。」

 

教員B「自信はないけど、謙虚になれず、周りからも扱いづらい人になっちゃったり。」

 

H先輩「一方で、カムバックに躊躇のないママ達のモチベーションは大体「家のローン」です。夫婦でタワーマンションや戸建てのローンを組んで、否応無しに職場復帰してきます。彼女達に「パートナーと同じ夢を見ていいね」と声をかけると、全員嬉しそうに「はい」と答えるのが印象的です。大変そうではあるけど、それを乗り越えようとしている彼女たちの充実感や有能感、自信、満足感のようなものが生き生きとした表情から伝わってくるんです。」

 

Y「不安なような、ワクワクするような…。」

 

X「一人のことなら自分で考えれば済むけど、結婚してからのことを考えるのは、なんだか怖いです。悩むことが増えそうで。少子化が進む理由も良く分かりました。」

 

教員B「職場復帰でも転職でも、お金の問題はとても重要で、メンタル・ヘルスの観点からも軽視しないで欲しいです。お金で鬱にもなるんです。」

 

全員「笑」

 

H先輩「勿論、お金が全てではないけれど、ローンを組んでから風邪をひかなくなったり、世の中の見え方が変わったりということもあります。経済的に自分の人生を歩むというのは大きな意味があると思います。ぼんやりしていられなくなる。人にも優しくできるようになるし。」

 

教員A「デイジーのメンバーの中には、あっけらかんと「子供ができたら仕事を辞めたい」と言う人もいます。確かに今日のお話にあったように育休後の職場復帰は大変なので、そのまま辞めて行く方も多いです。一方で、フルタイムを諦める経済的な損失も無視はできません。一旦就職できたとしても決して人生安泰なわけではない、ということが年を重ねるごとにクリアーに見えてきます。本人やパートナーの失職、病気や怪我のリスク、家族の介護という可能性も見えてくる。私も学生時代に家族が病に倒れたことで人生観が一変した経験があります。今豊かで幸せであっても明日はどうなるか分かりません。 自分達にできる範囲で人生のリスクを最小化してもらいたいですね。」

 

教員B「一度フルタイムを辞めて復帰しようとしても、想像していたような職種や給料の仕事が見つからずにプライドや給料を犠牲にして頑張っている人が沢山います。」

 

教員A「たった数年間、フルタイムから退いただけで、辞める直前と同じ状態(条件)からはスタートできないという事実に直面するわけですね。ひょっとすると、長い人生ではその差がマンション一戸分あるいはそれ以上になってしまうと言うことを、よく理解した上で行動を選んで欲しいと思います。」

 

X「学生時代のモラトリアム期、いろんなことに一生懸命取り組んで、悩んだり、考えたりしながら自信をつけて、しっかりと「自己分析」をした上で、「業界」、「企業」、さらには協力的な「パートナー」、子育てしやすい「住む場所(行政の支援と職場からの距離)」を真剣に選び、社会生活をより良いものにしたいです。H先輩、今日は本当に勉強になりました。長い間ありがとうございました。」

 

全員「ありがとうございました。」

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