2018.09.19
城西短期大学 お知らせ
2018年度 城西短期大学女性学講座「映画から読み解くジェンダー文化」 第5回(最終回) を行いました【城西短期大学 坂戸キャンパス】
 2018年9月1日、今年度第5回目となる城西短期大学女性学講座が行われました。
 今回の講座は、城西短期大学准教授の村越純子先生に講師を担当し、「規範からの逸脱?:映画『ベニスに死す』を手がかりに」と題して講義を行いました。

20180901短期大学女性学第5回

20180901短期大学女性学第5回

<コーディネーターより>
 今回の講座では、映画の古典的な名作とも言える『ベニスに死す』を取り上げ、わたしたちの社会に当然のように存在する「規範」とは一体何なのかについて解説を行いました。
 講座の前半では、『ベニスに死す』の主要な登場人物の特徴について概略的な説明を行いながら、この映画が「エロス」と「美」に関する物語であることを指摘しました。そしてこの主題を理解するために、プラトンの『饗宴』と『パイデイア』で示された「美」と「エロス」に関する解説が行われました。講座の公判では、砂時計の着目し、トーマス・マンの原作と映画を比較しながら、作品における砂時計の象徴性についてや、映画音楽などに言及しながら両者の根底にある「芸術家とは何か」という問いについて解説が行われました。
 講座を通じて村越先生は、わたしたちの生活を縛る「規範」の内容は、時代によって異なること、同じ行為であったとしても時代によって評価が異なることを具体的に示されました。そのような観点を得ることによって、ジェンダーという「規範」もまた、永遠普遍の価値なのではなく、改変が可能な価値であることが理解できようになりました。講座の終わりには、江戸時代における「衆道」や「男色」の存在に言及されながら、「規範」が有する時代性は日本でも同じように理解できることを示し、講座をまとめました。
 今年の女性学講座前半では、男の子、女の子の成長を扱い、少年少女が男性女性に成長する過程で獲得するジェンダーについて分析し、映画というメディアが発信する「理想の」男性像と女性像を明らかにしました。また最近では、映画などで示される女性像が多様化しつつある現状を確認しました。中盤では、女性という枠組みの問題をスポーツと「#me too」運動から問い、女性を「女性」に閉じ込めようとする力と、自分らしく生きることが可能な社会を創る力について考察しました。そして講座の最終回では、わたしたちが当然のように思わされているジェンダーなどの「規範」が、不変なものなのではなく、ある時代では「理想」であったにも関わらず別の時代では排除の対象となることを示しながら、「規範」を問うことの必要性を明らかにしました。
 今年の講座が、参加者のお一人おひとりにとって、何らかの希望を見いだすきっかけになれたなら幸いです。2018年度の城西短期大学女性学講座は、すべて終了しました。2019年度も女性学講座は継続いたします。また来年、みなさまとお会いできることを楽しみにしております。
 多くの方にご来聴いただきましたこと、心より御礼申し上げます。

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