2020.05.16
薬学部薬学科医療栄養学科薬科学科研究科 お知らせお知らせ(学科内)お知らせ(学科内)お知らせ(学科内)薬学研究科
【薬学部・薬学研究科】重症新型コロナウイルス感染症に対する新たな治療薬: 一酸化窒素吸入療法
 皆さんは、新型コロナウイルス(SARS-CoV2)感染症(COVID-19)による“STAY HOME”のなかで新しい生活様式の模索し、落ち着きを取り戻しつつあるのではないでしょうか。

 しかしながら、COVID-19は、いまだに世界中を席巻し、長期に及び遷延する可能性がある感染症になりつつあります。その中で医療従事者の勇気ある行動は、我々の国民の命を守ってくれています。一方、マスコミなどを介してファビピラビル(アビガン)、ベクルリー(レムデシビル)、シクレソニド(オルベスコ)、ナファモスタット(フサン)などの治療効果について耳にする機会が増えました。しかし、サイトカインストームなどの重症例では、最終的にECMO(体外式膜型人工肺)による治療が必要となり、ECMOの装置の数、稼動させる人的、経済的コストから医療崩壊に繋がる可能性が指摘されています。
 COVID-19のウイルスは、2003年の重症急性呼吸器症候群(SARS)のウイルス(SARS-CoV1)と同じ種類です。この時にSARSによる肺の障害に対して一酸化窒素(NO)吸入療法の有効性が認めらました(①~③)。
①    感染細胞内のコロナウイルス増殖抑制
②    血管拡張による肺換気血流改善とそれによる動脈血酸素化改善、
③    炎症抑制(白血球粘着抑制、血小板凝集抑制、血栓形成の抑制など)

 城西大学薬学部・城西大学薬学研究科の小林 順 教授・村田 勇 助教を中心とした研究グループは、クラッシュ症候群(地震災害などで発症し腎不全やサイトカインストームから起こる多臓器不全による致死的病態)にNO供与体が病態改善の効果と著明な救命効果があることを動物実験などで報告しています。
 私たちは、COVID-19の肺障害を介したサイトカインストームに着目し、ECMOへの移行を減らす可能性がNO吸入療法にあるのではないかと考えています。実際に、アメリカなどではNO吸入療法が有効かどうか臨床試験を行っています。この治療は、重症例のみならず、医師、看護師などの医療従事者に対する予防法としても検討されています。
 このNO吸入療法の提言は、この度、城西大学薬学部・城西大学薬学研究科の小林 順 教授と村田 勇 助教によってドイツの救急医療専門雑誌のAnnals of Intensive CareにLetter to the Editorとして掲載される予定です。日本ではまだ知られていない薬物療法ですが、臨床現場での医療崩壊を防ぐべく、早急にその効果と臨床現場への登場を期待しています。

 

NO吸入療法 J Kobayashi & I Murata

提案したNO治療の可能性について
引用:I. Murata and J. Kobayashi. Nitric oxide inhalation as an interventional rescue therapy for COVID-19-induced acute respiratory distress syndrome. Annals of Intensive Care. 2020 (accepted)


 

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