2022.10.03
お知らせ 大学
広重が風景画の人気絵師なのには理由があります! 浮世絵講座第2回『名所絵の要件~広重作品から考える~』

 2022年度に水田美術館が実施する浮世絵講座の第2回を、10月1日(土)に埼玉坂戸キャンパス水田三喜男記念館講堂にてオンライン参加併用で開催しました。
 浮世絵を5つの視点でとらえる今年の講座の第2回は、名所・風景画の分野。講師には国立歴史民俗博物館教授・町田市立国際版画美術館館長の大久保純一氏をお迎えしました。
 今回の講演の柱は、名所・風景画で葛飾北斎と人気で双璧をなす歌川広重は、どんな工夫をして描いていたのかに迫りました。歌川広重は、あのお茶づけのおまけで知られる東海道五十三次でよく知られる、江戸時代末期に活躍したの絵師です。
講義の導入は、西洋の透視図法(遠近法)が浮世絵版画にもたらした影響から。この技法が習得されるなかで、屋外を描く風景画が成長、そこにベロ藍という鮮やかで濃淡表現に優れた化学染料が使われるようになり風景画の奥行き表現を高めたこと、庶民の旅行ブームが名所への関心を高めたことなどを併せて解説して、名所・風景画の成立を概観しました。
これを踏まえて、北斎と広重の代表作を比較。北斎が対象をどう描くかにこだわったのに対して、広重は風景に何を描くかに重きを置いていたとの観点から、広重人気の秘密を紹介。
技法からは、透視図法で遠近感をだし、ベロ藍を刷りの技法と組み合わせて海や空に使い鮮やかに仕上げ、全体をリアリティ豊かな旅情を誘う風景描写に仕上げた、と説明。併せて作品の見所として、雨や風の表現、時間や季節感もとり入れていることを、例をあげて解説されました。
 浮世絵版画は売り物だとの観点では、「あの場所ならばコレが描かれていないと」と特定の風景に期待するポイントをしっかりと描きこむ消費者心理を捉えた作画、既存の風景画を再構成して見栄えのする画に仕立てる絵師としての技量、さらには使う色の数を抑えて製作コストを下げる版元(出版社)への配慮もみえることなどにも言及されました。
浮世絵版画としての風景画の面白さを味わう約60分の講義は、拍手で終了しました。
終了後にはロビーで、「名所絵立体アートづくり」のミニワークショップを開催。参加された方が浮世絵版画に描かれた風景の前後関係を立体にして楽しみました。

開催報告は美術館HPからもご覧頂けます。
9月24日「摺り実演会」開催報告はこちらから。


第3回オンライン参加のご案内
第3回は10月8日(土)13:30~15:00 國學院大学教授・国際浮世絵学会常任理事 藤澤 紫先生による「美人画に恋して~ものがたる浮世絵~」をオンライン講演で開催します。
下記からオンライン参加(zoom)を受け付けています。
申込期限: 2022年10月5日(水)午後4時まで
オンライン参加の受け付けはこちら

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