2022.12.05
お知らせ 大学
江戸っ子の視点で観る・遊ぶ 浮世絵講座第5回『おもちゃ絵 あれもこれも』【城西大学水田美術館】

 2022年度に水田美術館が実施する浮世絵講座の第5回を、12月3日(土)に埼玉坂戸キャンパス水田三喜男記念館講堂にて、リアルとオンラインの併用で開催しました。
 「役者絵」「名所絵・風景画」「美人画」「武者絵・戯画」に続いて、最終回は「おもちゃ絵」です。講師にはUKIYO-E PROJECT Adviser 国際浮世絵学会常任理事 新藤 茂 先生をお迎えしました。
 おもちゃ絵は、江戸時代の終わりから明治に広まった、子ども向けの浮世絵のこと。遊んで・使って・捨ててしまう、実用的な浮世絵です。海外で高く評価される浮世絵でも、分かりにくい役者絵やおもちゃ絵は注目されず、研究されない・欲しがられない分野なのだとか。おもちゃ絵自体も、販売期間が限られるものでなく何度も刷られることから、もとから刷りの良くないものや、残っていても粗末に扱われて痛んでしまったものが多いそうです。一方で、浮世絵の世界や江戸文化をよく知らないとおもちゃ絵は分からない、とのことです。

 今回の講義は、細かなことにこだわらずおもちゃ絵をザッと捉えて、江戸の美学で楽しみましょうと始まりました。
 まず、「新板○○づくし」のようなタイトルがある、似たものを集めた絵で楽しむおもちゃ絵から。「新版かたち凧づくし」では、個々の絵は何の絵かと解説しながら、凧の元の名であるイカの絵があること、よく揚がるようにと“ウナギのぼり”の言葉遊びをかけたウナギの絵など、絵の面白さを解説されました。「東海道五十三次」を遊んだ「其のまま地口 猫飼好五十三疋」では、表題の遊びだけでなく、宿場の名を江戸時代の駄洒落である地口で猫の絵を使って表現していること、岡崎では尾が裂けた猫を描いて“尾が裂き”の言葉遊びのうえで歌舞伎で知られる化け猫の物語と結びつけるなど、教養で味わう品でもあったことを説明されました。
 続いて、工作を楽しむ組上絵や廻り灯籠のような細工物、着せ替え人形やかつらのつけ換え、現代のカードゲームのようなもの、すごろく、福笑いなど、おもちゃ絵のあれこれを画像とともに紹介していただきました。あわせて、これは後に高名となるだれだれの若い時の作品です、といった絵師紹介もあり、浮世絵のなかのおもちゃ絵の意味も感じることが出来ました。
 新藤先生によれば、10時間分の用意を80分でお話しされたとのこと。まだまだ語りたい・聞きたいところで講義時間は一気に終了になりました。
 この日、会場のロビーには実際に組上げたおもちゃ絵を展示し、歌川国郷 東錦絵大當芝泉の簡易版組立キットの組上げるミニワークショップも開催しました。
 
城西大学水田美術館の2022年度浮世絵講座は、今回をもって終了です。たくさんの皆様にご来場・ご参加をいただきました。ありがとうございました。

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(広報課)

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