日本語は難しい?日本語の文化や特徴、特有の表現について解説
日本語は世界の言語のなかでも特に複雑で、習得難易度の高い言語ともいわれています。そもそも、日本語はどのような歴史で独自の言語を形成したのでしょうか。
本記事では、日本語の起源や特徴を紹介するとともに、日本語が難しいといわれる理由、日本語特有の表現なども詳しく解説していきます。
もくじ
日本語の起源と歴史
古代の日本列島には、縄文人とよばれる民族が暮らしていたと考えられています。しかし、この時代にどのような言語が使用されていたのか、具体的な証拠が残されていないため、詳しいことはわかっていません。
紀元前300年頃から300年頃の弥生時代になると、渡来人によって稲作や鉄器などの新しい技術がもたらされたと考えられています。海外からの文化が渡ってくるということは、当然言語も変わったと推測され、現代の日本語の基礎となる形が徐々に形成されていった可能性は高いでしょう。
日本の歴史を振り返ったとき、中国語や朝鮮語からもたらされた影響は少なくないとされています。漢字や仏教が伝わった際には大量の漢語が導入され、中世以降も中国や朝鮮との交流により多くの言葉が取り入れられました。
ちなみに、「古事記」や「万葉集」が書かれる時代以前は、紙に書き残す際には漢文を、口頭でコミュニケーションをとるときには日本語を使用していたことがわかっています。
これ以外にも、日本語の起源と歴史については多くの説が提唱されています。たとえば、日本列島の北部から渡ってきたアルタイ語と、南から渡ってきたオーストロネシア語が混ざって日本語を形成したとされる説や、今から約9,000年前に、中国の北西部にある西遼河流域からトランスユーラシア言語が広範囲に広まっていったとされる説もあります。
日本語文化・文章の特徴
日本人が使用している日本語は、他国の言語と比較した場合にさまざまな違い・特徴が見られます。
漢字の使用
英語圏の国ではAからZまでの26のアルファベットを組み合わせた単語を使用しますが、日本語では漢字とひらがな・カタカナを併用します。言語の学習において使用する文字の数は圧倒的に多く、漢字に至っては日本人でも読み書きが難しいものもあるほどです。
文法
英語をはじめとした多くの外国語は、SVO型とよばれる「主語-動詞-目的語」の順番で構成されます。
これに対し日本語は、いわゆるSOV型ともよばれる「主語-目的語-動詞」の順番を基本としますが、文脈によっては自由に変えることもできます。
また、日本語には「が」「の」「を」「に」「へ」「で」などの助詞が存在し、名詞の関係や働きを示します。助詞の使い方ひとつで意味が全く異なる文章になることも多いのです。
敬語
日本語の場合、相手に対する敬意を示すための「敬語」が存在します。また、さらに細かく分類すると「尊敬語」や「謙譲語」、「丁寧語」などに分けられ、それぞれのシチュエーションに応じて使い分けることで円滑なコミュニケーションを実現しています。
わびさびとはなにか?
日本特有の感性や哲学に「わびさび」という概念があります。これは、時代の流れや自然の摂理によって生じる不完全さや儚さの中にも、美しさや奥深さ、趣を感じるという感覚を指します。
「わびさび」と聞くと格式が高く一般の私たちには理解が難しいもののように感じられますが、決してそのようなことはありません。
「わびさび」は日本の文化の随所に現れており、日本語も例外ではないのです。たとえば、「桜散る」、「雪が積もる」などの日本語は、直接的に読み取れば自然や天候の状態を示しています。しかし、これらの言葉の裏には春が過ぎて新緑の季節の訪れを感じさせたり、冬が訪れ厳しい寒さがやってくるといったことも暗示させています。
このような日本語の技法を見ても「わびさび」の文化は根付いており、日本人は意識せずとも感覚的に理解しているのです。
日本語が難しいといわれる理由
外国人にとって、数ある言語のなかでも日本語は特に難易度が高いとされています。上記で紹介した「漢字の使用」や「文法」、「敬語」といった要素ももちろんありますが、それ以外にも日本語が難しいとされる理由はあります。
発音とアクセント
日本語の発音やアクセントは多くの他の言語と異なるほか、同じ表記でもアクセントの位置によって全く異なる意味に捉えられるため、学習者にとっては発音が難しく感じられるかもしれません。
たとえば、「箸」では「は」を強調しますが、「橋」では強調する部分がありません。アクセントには共通のルールがないことから、単語によって一つずつ覚えていかなくてはならないのです。
文化的な背景
日本語は日本の文化と深く結びついており、文化的背景を理解しなければ言葉の真の意味を完全に理解することは難しいといえます。
たとえば、「すみません」という言葉には、謝罪の意味もあれば、感謝をしたり伺いを立てたりする意味で使われることもあります。
日本には古くから「和」の精神があり、直接的な対立を避ける傾向があることから、間接的な表現や謙遜する表現が用いられることが多いのです。
日本語特有の表現
外国の言語を学習していくと、普段なにげなく話しているにもかかわらず、外国語で直訳できるような言葉が見つからないケースも出てきます。これらは、いわば日本語特有の表現ともいえます。
わびさび
上記でも紹介した通り、「わびさび」という概念や価値観は日本独自のものであり、外国語として正確に表現できる言葉はあまり見つかりません。
これ以外にも、落ち着いた趣のある雰囲気などを表す「渋い」という言葉も日本語ならではの表現です。
いただきます・ごちそうさま
日本では命をいただくことに敬意を表し、食事の前に「いただきます」、食後に「ごちそうさまでした」という文化があります。しかし、海外では祈りを捧げることはあっても、言葉として発する文化は少ないようです。
もったいない
「mottainai」という単語が海外で定着したことからもわかるように、この言葉も日本ならではの表現です。日本ではモノに神が宿るという考えや信仰があり、モノを大切する文化が定着しているためです。
美しいとされる日本語の言葉や表現の紹介
日本語の世界は奥深く、日本人でさえも知らない単語や言葉、表現が存在します。日本語を学ぶうえで覚えておきたい綺麗な日本語の一例を紹介しましょう。
五月雨(さみだれ)
6月から7月頃に降る長雨(梅雨)
木漏れ日(こもれび)
木々の間から差し込む日光
黄昏(たそがれ)
薄暗い夕方
時雨(しぐれ)
冬の初め頃に降る断続的な小雨
凪(なぎ)
海や湖が風の影響を受けずに静かな状態
絆(きずな)
人々との強い結びつき、深い人間関係
微睡む(まどろむ)
うとうとする、浅い眠りに入っている状態
無常(むじょう)
あらゆるものが常に変化し、不変のものはないという仏教的な思想を表す言葉
刹那(せつな)
非常に短い時間、一瞬
物の哀れ(もののあわれ)
物事に触れて覚える深い感動や情感
月見(つきみ)
月を愛で、その美しさを楽しむこと
夕焼け(ゆうやけ)
夕方に太陽が沈む時の美しい空の色
上記はあくまでも一例に過ぎず、これ以外にも美しい日本語は数多く存在します。いずれも共通しているのは、単なる物理的な事象や現象を表しているものではなく、季節や時間の移ろい、そのときの情景、人々の情感なども表した言葉でもあるのです。
日本語を正しく学ぶメリット
外国人にとって、日本語を習得するためには日本人と日常的にコミュニケーションをとったり、映画やアニメなどを観ながら学んだりする方法もあるでしょう。
一方で、日本語を学べる大学やスクールも数多くあります。教育機関で正しい日本語を学ぶことには、どのようなメリットがあるのでしょうか。
円滑なコミュニケーション
日本語にはさまざまな表現があり、言葉選びを間違ってしまうと人間関係に亀裂が生じたり、トラブルに発展したりすることもあります。
正しい日本語を学ぶことで、多様な言い回しや表現、語彙の中から、そのときの状況やシチュエーションに応じて最適な言葉を用いられるようになります。
文化も理解できる
教育機関での日本語の学習は、言語そのものだけでなく、日本ならではの文化や歴史、時代背景なども同時に学んでいきます。これにより、文学作品や芸術に触れたときに、その真意を正しく理解できるようになり、深い感動も得られるでしょう。
ビジネススキルの向上
どのようなビジネスであっても、基本となるのは言語によるコミュニケーションです。営業や販売であれば顧客との対話が基本となるほか、バックオフィス業務ではビジネス文書を作成するためにフォーマルな表現を用いる必要があるでしょう。
日本語を学ぶことにより、ビジネスの場面でも円滑なコミュニケーションが実現できビジネススキルの向上につながります。
城西大学の教育の特徴
城西大学別科の「日本語専修課程・日本文化専修課程」では、日本の大学や大学院への進学、企業への就職を目指す外国人留学生のために、日本語教育のカリキュラムを提供しています。
日本語専修課程では「日本語能力試験」や「日本留学試験」といった試験の高得点獲得を目指したカリキュラムを編成し、独自教材を用いた補講なども行っています。
また、日本企業への就職を目指す方には日本文化専修課程がおすすめです。日本語だけでなく、日本文化をより深く理解するカリキュラムが用意されており、諸外国の文化との比較研究をしながら、経済や経営に関する基礎知識も修得していきます。
また、コンピュータを用いた実務的な学習や、企業見学や社会施設見学といった特別研修科目もあります。
まとめ
日本語は世界各国の言語のなかでも特に複雑で、難易度の高い言語として知られています。日本語に触れたことがない外国の方にとって、一から日本語を学ぶのは大変だというイメージもあるでしょう。
本当の意味で日本語を理解するためには、単に文法や単語を学べば良いというわけではなく、日本の文化も学んでいく必要があります。
城西大学別科では、外国人留学生向けに「日本語専修課程・日本文化専修課程」を用意しており、体系的な日本語学習によって「日本語能力試験」や「日本留学試験」の高得点取得をサポートします。
高山幸巳
- 現職 城西大学別科助教
- 学歴 早稲田大学大学院日本語教育研究科修士課程修了(2005年3月)。
- 学位 修士(日本語教育学、早稲田大学)。
- 経歴 早稲田大学日本語教育センターインストラクター、
- フランス・ボルドー第三大学日本学科レクトリス、コントラクチュエル、
- 城西大学別科非常勤講師を経て、2017年より現職。
- 所属学会 公益社団法人日本語教育学会