生体機能とは?加齢によってどう変化する?応用方法も解説
もくじ
私たちが普段無意識のうちに行っている呼吸や運動などは、生体機能ともよばれることがあります。また、このような目に見える行動だけでなく、血液の循環や脳への神経伝達なども生体機能に含まれます。
生体機能は人間にとってどんな役割を果たしているのかを解説するとともに、加齢によってどのように変化していくのか、生体機能を応用した研究分野も紹介します。
生体機能とは
生体機能とは、「身体のなかで起こる組織的作用」と定義されています。これだけでは抽象的で分かりにくいため、もう少しわかりやすく具体的に説明しましょう。
私たちの身体では、周囲の状況や環境が変化しても、できるだけ一定の状態を保てるような調節機能があります。たとえば、気温が高くなったときに汗をかくのも代表的な生体機能です。皮膚の表面に汗をかくことで、汗が蒸発するときに表面の熱を奪い体温を下げる働きがあります。
私たちの細胞や組織レベルまで詳しく見てみると、さまざまな生体機能があり、それらが複合的に作用することで健康な状態を保っているのです。
生体機能の3つの基本
生体機能は、主に以下の3つの機能に分けることができます。それぞれの具体例を含めて解説しましょう。
生理機能
生理機能とは、基本的な生命活動に関連する機能であり、私たちにとっても身近な内容のため分かりやすいでしょう。
冒頭で紹介した汗をかくことも生理機能のひとつですが、それ以外にも呼吸や排泄、血液などの循環、生殖なども含まれます。
神経機能
神経機能は、さまざまな情報の収集や反応の調整に関わる機能です。
視覚や聴覚、触覚などから得られる情報の伝達や、脳からの司令による筋肉の運動なども神経機能にあたります。
免疫機能
免疫機能とは、ウイルスなどの病原体や異物、さらには体内で発生する異常な細胞(がん細胞など)を防御する機能です。
病気やケガをしてもある程度の自己治癒力を発揮できるのは、免疫機能のおかげともいえます。
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加齢によって生体機能はどう変化するのか?
一般的に年齢を重ねていくにつれて生体機能は衰えることが知られています。
たとえば、体調を崩しやすくなったり、病気やケガの回復に時間を要したりすることがありますが、これは免疫機能の低下が大きく影響しているといえるでしょう。
また、視力や聴力の低下、身体が思うように動かなくなるといった症状は神経機能の低下が考えられるほか、血行不良による冷え性や生殖機能の低下、排泄障害などは生理機能の低下によって引き起こされると考えられています。
ただし、老化の進行速度は一律ではなく、人によっても差があります。これは日頃の生活習慣の違いや、生まれもった身体的特徴などが複雑に関係しているとされています。
生体機能の応用方法
人間が生命活動を維持していくうえで欠かすことのできない生体機能ですが、この分野を研究することでどういった応用が期待されるのでしょうか。
医療
医療の分野では、私たちが本来もっている免疫機能などを高め、薬や手術に頼らない治療法が研究されています。どのようなタイミング、条件が揃うと免疫機能が高まるのかを研究によって解明できれば、痛みや身体への負担が少ない治療法が新たに開発される可能性もあるでしょう。
スポーツ科学
スポーツ科学とは、アスリートが最大限のパフォーマンスを発揮できるようにするためのアイデアや手法、トレーニング方法を研究する分野です。
スポーツは身体的な能力以外にも心理学や栄養学などさまざまな分野が関係してきますが、なかでも神経機能の仕組みや働きを知ることで、私たちがもっている身体的能力を極限まで高められます。
バイオテクノロジー
バイオテクノロジーとは、遺伝子技術や細胞技術の仕組みを学び、人間以外の生物がもっている働きを応用し、私たちの生命維持や活動に役立てる研究を指します。
バイオテクノロジーは生理機能はもちろん、神経機能や免疫機能などあらゆる生体機能を高めるためのヒントを与えることになります。
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生体機能を保つための生活習慣
生体機能はさまざまな要因によって低下していくことがありますが、これを防ぐためにはどのような生活習慣を身につけることが大切なのでしょうか。
適切な運動
身体を動かすことは生理機能や神経機能、免疫機能を維持していくうえで欠かせません。
プロのアスリートのようにハードなトレーニングを行う必要はありませんが、週に数回程度でもウォーキングやランニング、筋力トレーニングなどを継続していきましょう。
運動をすることで筋力の低下を防げるほか、血液の循環も促進されます。
バランスの取れた食事
生体機能の維持に欠かせないのが食事です。栄養バランスが偏った食事を摂っていると、免疫力の低下を招き病気にかかりやすくなるほか、ケガなどの自己治癒力が低下することもあります。
そのため、生体機能を維持していくためには栄養バランスのとれた食生活を送ることが大切です。
睡眠
肉体的な疲労の回復はもちろん、免疫機能の維持・向上の面からも質の高い睡眠を確保することは重要です。特に現代人は睡眠不足に陥ることも多いため、まずは十分な睡眠時間を確保することを心がけましょう。
創薬科学を学ぶ魅力
生体機能の低下は、色々な病気に繋がる可能性を高めることになるので、生体機能の理解が重要な分野として創薬科学があります。創薬科学は病気やケガ、その他心身の不調に悩む多くの人を救える可能性のある社会的意義の大きい分野でもあります。
「創薬」とはその名の通り、新薬の研究開発を指すもので、さまざまな実験や臨床試験が行われます。
薬に含まれる成分によっては免疫機能を高める働きがあるものもあれば、反対に免疫機能を低下させるものもあるため、慎重に効果を評価しなければなりません。
薬剤を投与したときに生理機能や神経機能にどういった影響を及ぼすか、その危険性やリスクも繰り返し評価しておかないと、重大な健康被害を生じさせる可能性もあるでしょう。
創薬科学は多くの人の命を救える可能性がある魅力的な分野ですが、新薬の設計や開発、研究においては、生体機能の仕組みを学ぶことが欠かせないのです。
城西大学の教育の特徴
生体機能を含め、創薬科学を学ぶためには専門課程のある大学へ入学する必要があります。
城西大学では、薬学部のなかに4年制の薬科学科を設置しており、医薬品をはじめ化粧品や機能性食品、セルフメディケーションなどの研究開発に必要な専門知識を学ぶことができます。
主な就職先としては製薬会社はもちろん、化粧品メーカーや食品メーカー、化学メーカーなどがあり、多くの卒業生が創薬科学の分野で活躍しています。
また、創薬の分野ではさまざまな植物、菌などから健康に役立つ成分を見つける研究もあり、それが生体機能へどのような効果・影響を及ぼすのかも実験を通して体系的に学ぶことができます。
まとめ
私たちの生命活動は生体機能によって成り立っています。普段はあまり意識することがないかもしれませんが、生理機能や神経機能、免疫機能を細かく学ぶことで新たな発見が見えてくることもあるでしょう。
また、私たちの健康を支えるために日々さまざまな新薬の研究開発が行われていますが、効果や安全性を適正に評価するためにも生体機能を学ぶことは欠かせません。
創薬科学を学び、将来は新薬の研究・開発に携わりたいと考えている人は、生体機能の基礎から勉強を始めてみましょう。
白幡 晶
- 薬学博士 ( 1981年03月 東京大学 )
- 城西大学 城西短期大学 ビジネス総合学科 副学長(2022年04月 - 現在)
- 研究分野 ライフサイエンス / 薬系分析、物理化学 / 分析化学、生化学、細胞生物学