健康食品の定義とは|選ぶ際の目印や注意すべきポイントについて

健康・医療
山王丸 靖子

健康食品とは

誰もが知っている「健康食品」や「サプリメント」という用語には国や行政による明確な定義はありません。

一般に、健康食品とは「健康の保持増進に資する食品全般」が、またサプリメントとは「特定成分が濃縮された錠剤やカプセル形態の製品」がそれぞれ該当すると考えられています。

ちなみに米国ではDietary Supplementを「従来の食品・医薬品とは異なるカテゴリーの食品で、ビタミン、ミネラル、アミノ酸、ハーブなどの成分を含み、通常の食品と紛らわしくない形状(錠剤やカプセルなど)のもの」と定義し、またヨーロッパでも同様のものを”Food Supplement”と定義しています。

健康食品やサプリメントで最も配慮されていることは、医薬品との違いです。

わたしたちが口から摂取するもののうち、医薬品(医薬部外品を含めて)以外のものはすべて食品に該当し、食品に対して医薬品のような身体の構造や機能に影響する表示をすることは、原則として認められていません。

米国のDietary Supplementでも「病気を”診断する”、”予防する”、”治療する”、”軽減する”」などの表現は許されていません。これは我が国の「健康食品」や「サプリメント」においても同様です。

関連記事:BCAA(分岐鎖アミノ酸)の効果とは?EAAとの違いを解説!

食品の表示制度について

我が国では食品の中でも国が制度を創設して機能等の表示を許可しているものがあります。

A.国が制度を創設して表示を許可しているもの

(1) 特定用途食品

特別用途食品とは、乳児や妊婦、授乳中の女性、病気の人など、特別な医学的・栄養学的な配慮が必要な人々の成長や健康の維持・回復に適した食品のことです。

この食品には特別な表示が許可されていますが、この表示をするためには、健康増進法(第26条)に基づいて消費者庁長官の許可が必要です。

許可基準がある場合は、その基準に適合しているかどうかが審査されます。もし許可基準がない場合は、個別に評価が行われます。

(2)保健機能食品

①特定保健用食品

食品の成分全般が健康に役立つことを広く対象とし、科学的にその効果が認められたものについて、消費者庁長官の許可を得て特定の用途に適していると表示された食品です。

現在では、特定保健用食品(疾病リスク低減表示・規格基準型を含む)と条件付き特定保健用食品の2種類があります。

これらの食品は、有効性や安全性について基本的に消費者庁と食品安全委員会の審査を受けることが義務付けられています。

②栄養機能食品

(マークはありません)

体の健全な成長や発育、健康の維持に必要な栄養成分を補うための製品です。

12種類のビタミン(A、B1、B2、B6、B12、C、E、D、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビオチン)と5種類のミネラル(鉄、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、銅)が国の基準を満たしている製品には、定められた栄養機能表示を付けて販売することができます。

これらの製品は国への届出や審査が不要です。

③機能性表示食品

(マークはありません)

安全性及び機能性に関する一定の科学的根拠に基づき、食品関連事業者の責任において、疾病に罹患していない者(未成年、妊産婦(妊娠を計画している者を含む)及び授乳婦を除く。)に対して、含有される機能性関与成分によって健康の維持及び増進に資する特定の保健の目的(疾病リスクの低減に係るものを除く。)が期待できる旨を容器包装に表示できる食品です。

国の定めるルールに基づき、事業者が販売前に消費者庁長官に届け出ることが必要です。

*特定保健用食品、栄養機能食品及び機能性表示食品以外の食品に、食品の持つ効果や機能を表示することはできません。(食品表示基準第9条)

B. A以外のもの(いわゆる健康食品と呼ばれているもの)

(マークはありません)

(1)機能性食品

食品には大きく分けて以下の3つの機能があり、これを三大機能といいます。

①一次機能とは、栄養機能を指します。基本的な機能で、人体を構成し、エネルギー源および栄養素供給源となります。

たんぱく質・糖質・脂質・ミネラル・ビタミンの五大栄養素がこれにあたります。

②二次機能とは、感覚・嗜好機能を指します。食品の美味しさや嗜好などの感覚的な機能です。

甘味、酸味、塩味、苦味、旨味、辛味、渋味などの味覚のほか、香り、色、歯ごたえ、などがこれにあたります。

③三次機能とは、生体調節機能を指します。食品に含まれる成分が体の色々なシステムを調節する機能です。

三次機能は、健康の保持増進、生活習慣病の予防、疾病回復に関係します。

このように三大機能のうち、三次機能に注目した食品を特に「機能性食品」と呼びます。

すなわち、市場において販売および流通している一般の食品に対して、体の調子を整える効果に注目した食品はすべて「機能性食品」にあたります。

現状では「機能性表示食品」と混同されることが多いのですが、両者は全く異なるものです。

(2)栄養補助食品

かつて「健康食品」に関する制度が見直される前(平成16年)によく使われていた名称です。

当時(平成12年頃)は、栄養成分を補うためや特定の健康目的のために販売されている食品で、錠剤やカプセルなど通常の食品の形態ではないものを指していました。

現在では、国が制度化や定義を行っているものではありません。

(3)健康補助食品

栄養成分を補ったり、特定の健康目的に適したりする食品、または健康の維持・増進や健康管理のために摂取される食品として、財団法人日本健康・栄養食品協会が提案しています。

(4)栄養強化食品

平成8年の栄養表示基準が作られる前の制度では、健康な人向けに「補給できる」と表示することが許可されていた食品です。

しかし、平成8年以降、栄養表示基準制度の創設により、栄養強化食品という分類は廃止されました。

(5)栄養調整食品など

国が制度化しているものではなく、表示の許可や認証、届出といった規制はありません。

ただし、平成15年に新設された健康増進法の虚偽誇大表示の禁止規定や、食品衛生法の表示基準(保健機能食品と混同しやすい名称、栄養成分の機能や特定の保健効果を期待させる表示は禁止)、薬事法、景品表示法などには違反してはいけません。

どのような食品がこれに該当するかは明確ではありません。

(6)サプリメント

健康食品の中で、アメリカのDietary Supplementのように特定の成分が濃縮された錠剤やカプセル形態のものが該当すると考えられていますが、スナック菓子や飲料までもサプリメントと呼ばれることがあります。

日本においては、ビタミンやミネラルが栄養機能食品の基準を満たしているものは、栄養機能食品と表示されています。この栄養機能食品が、日本流のサプリメントに当たると考えられます。

関連記事:アスリート・運動をする人が摂るべき栄養素やサプリメントについて解説

健康食品に含まれる代表的な成分

水溶性ビタミン

ビタミンB群

エネルギー代謝に必須のビタミンです。脳内神経伝達物質の生成にも必須です。

ビタミンC

抗酸化作用を持つビタミンです。欠乏すると全身の倦怠感や疲労感、食欲不振、からだの各部位からの出血などの症状が現れます。ヒトは体内でビタミンCを合成できません。

脂溶性ビタミン

ビタミンA

視力の維持、免疫機能の強化に必要なビタミンです。欠乏すると夜盲症や感染症のリスクが高まります。

ビタミンE

細胞膜の保護や免疫機能の維持に重要です。老化や慢性疾患の予防にも役立ちます。欠乏すると筋肉や神経の異常が生じることがあります。

ビタミンD

血中カルシウム濃度を一定に調節する作用を持ちます。

欠乏すると、体内におけるカルシウム再吸収が低下して低カルシウム血症となります。そのため、骨の軟化がおこりやすくなります。

ミネラル

鉄分は日本人が不足しやすい栄養素の一つです。不足すると鉄欠乏性貧血になります。

貧血予防のためには、鉄分だけではなくたんぱく質、ビタミンB12や葉酸も摂取する必要があります。

亜鉛

数百におよぶ酵素たんぱく質の構成要素として、さまざまな生体内の反応に関与しています。味覚を感じる味蕾細胞や免疫反応にも関与しています。

通常の食事では過剰摂取の可能性は低いのですが、過剰摂取は銅欠乏、貧血、胃の不調など様々な健康被害が生じることが知られています。

カルシウム

カルシウムは骨や歯の形成と維持に必須で、神経伝達や筋肉収縮、血液凝固にも重要です。不足すると骨粗鬆症や筋肉痙攣のリスクが増加します。

マグネシウム

マグネシウムは300以上の酵素反応に関与し、エネルギー産生、筋肉と神経の機能、骨の健康に必要です。不足すると筋肉のけいれんや疲労、心臓の異常が生じる可能性があります。

タンパク質・アミノ酸

プロテイン

プロテインとはタンパク質の意味です。粉末のプロテインのほかにも、バータイプやゼリー飲料など様々な種類の食品があります。

粉末プロテインには、牛乳由来の「ホエイプロテイン」や「カゼインプロテイン」、大豆由来の「ソイプロテイン」があります。

身体活動量の多いアスリートが、運動時や筋肉トレーニング時に用いることが多いのですが、低栄養が懸念されるシニア層でも、タンパク質摂取不足を補うためにプロテインを活用するのも選択肢の一つと考えられます。

図は、プロテイン(タンパク質)を構成するアミノ酸を示しています。

アミノ酸は、たんぱく質を構成するだけでなく、神経伝達物質やビタミンなどの生理活性物質の前駆体として重要です。

アミノ酸には、体内で合成できない必須アミノ酸9種類と、合成できる非必須アミノ酸11種類があります。

必須アミノ酸のうち、バリン、ロイシン、イソロイシンの3つは枝わかれするような分子構造をしているため、BCAA(Branched Chain Amino Acid:分岐鎖アミノ酸)と呼ばれます。

このBCAAは、筋肉の分解を抑制して、筋肉のエネルギー源となることから注目されています。

健康食品を選ぶ際に注意すべきポイント

原材料情報が公開されていること

健康食品やサプリメントのパッケージには原材料の表記が義務化されています。いっぽうでホームページでは原材料の表記がないケースが多々見受けられます。

インターネットでの購入が主流となりつつありますが、事前に必ず原材料情報を確認しましょう。

成分量の確認

成分量が1日あたりの量なのか、1粒(カプセル)あたりの量なのかは必ず確認しましょう。

許可・認証マークの確認

国が制度を創設して表示を許可し、マークが表示されているのは特定用途食品と特定保健用食品だけです。それ以外に公的なマークはありません。

過剰摂取は避ける

製品パッケージに記載された1日あたりの目安量を超えないようにしましょう。ただし、医師の指導の元で摂取する際は医師の判断に従うことをおすすめします。

海外製サプリメントの注意点

海外製のサプリメントを購入する際は、原材料や成分のチェックをおすすめします。

海外製のサプリメントの原材料の中には日本において食品として認可されていないものもあります。

海外製のサプリメントの使用はあくまで自身がリスクを追う、という認識が必要です。

関連記事:生体機能とは?加齢によってどう変化する?応用方法も解説

健康食品にも有害なものがある?

いわゆる健康食品として流通している製品の中で、違法に医薬品成分を含有していたり、医薬品のような病気の治療・治癒を謳った製品であることが行政のチェックで判明することがあります。

健康被害で世間を賑わせた紅麹のような事象が起こるケースもあります。体内に摂取する以上、100%安全とは言い切れません。

そのため、アレルギー成分同様、自分の体調管理はあくまで自己責任が原則です。

摂取による体調の変化など、心配なことがあれば、医師、薬剤師、管理栄養士に相談しましょう。

また、健康食品やサプリメントを摂取している人は、医療機関を受診する際に、その旨を必ず伝えましょう。

自分の健康を守るのは、自分だという認識を常に持たなければなりません。

◆東京都の発表資料より:多様な健康食品、利用状況、利用目的、情報源と購入ルート◆

健康食品やサプリメントの将来像

現在では、様々な機能を謳った食品が市場に出回っています。

しかし、包装をよく確認しないと、その商品が法律で制度化された「保健機能食品(特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品)」なのか、法的根拠のない「いわゆる健康食品」なのかわかりません。

そのため、健康の保持増進のために摂取する食品については、よく確認をしなければなりません。

今後も、食品の機能に関する研究は進み、その成果から新しい機能が発見される可能性があります。

何をどのように摂取するか、消費者自身がよく考えて選択して使うことが必要です。

最近では、医療機関で健康食品やサプリメントを提案しているケースが見受けられるようになってきました。

医療機関で推奨される商品について、行政や国が定める明確な定義はありません。

しかし、医療機関からの提案は医師による一定の担保があると考えてもいいでしょう。

自分の健康を守るのは自分です。健康食品を上手に使い、健康寿命を延伸させましょう。

この記事を書いた人

山王丸 靖子

  • 所属:薬学部 医療栄養学科
  • 職名:准教授
  • 研究分野:人文・社会 / 家政学、生活科学

学位

  • 博士(学術) ( 2004年03月   お茶の水女子大学大学院 )
  • 修士(食品栄養学) ( 1992年03月   東京農業大学大学院 )
  • 学士(農学) ( 1990年03月   東京農業大学 )

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