社会インフラの意味とは?なぜ必要なのか老朽化問題について解説

地域・社会
藤野 陽三

「インフラ」という言葉は多くの方が聞きなじみのある言葉になってきていることと思いますが、実際にどういったものがインフラにあたるのかまでは知らないという方がほとんどでしょう。

社会インフラは私たちの生活を支える重要な基盤であり、日常生活のあらゆる場面で密接に関わっています。

本記事では、見えにくい存在ではあるものの社会全体の安心・安全、そして経済活動を支える不可欠な存在である社会インフラについて深掘りして解説します。

そもそも社会インフラってどういうもの? 

私達が生活したり物を生産したりする上で必要な、例えば、水道や電気、ガスといった生活に欠かせないエネルギー供給から、道路や橋といった公共物までがまとめて社会インフラと呼ばれます。

どれも必要不可欠なものであることは言うまでもありませんが、特に最近の例でいえば、通信ネットワークが整備されているおかげでインターネットを通じた情報収集や仕事、さらには遠く離れた人との連絡がスムーズに行えるのです。

社会インフラと似ている言葉

「インフラ」と一口に言ってもいくつかの種類があり、社会インフラに含まれるものからそうでないものまで様々です。

ここでは、社会インフラと似た言葉について説明します。

生活インフラ

生活インフラとは、私たちの生活を支える基本的な設備やサービスのことを指します。具体的には、水道、電気、ガス、通信、交通など、日々の生活に欠かせないインフラが含まれます。

例えば、水道があれば清潔な水を簡単に使え、電気やガスがあれば料理や暖房、照明などが可能に。また、交通インフラが整っていれば通勤や移動がスムーズに行えるほか、物流も安定し、物資が安定的に供給されるため生活の質の向上が期待できるでしょう。

通信インフラも重要で、インターネットを通じて情報収集やコミュニケーションが容易にできることで社会全体の効率化に貢献しています。

経済インフラ

経済インフラとは、経済活動を円滑に進めるために必要な基盤やシステムのことを指します。

これには、交通インフラ(道路、鉄道、港湾、空港など)、通信インフラ(インターネット、電話、モバイルネットワークなど)、エネルギーインフラ(電力、ガス、石油など)、金融インフラ(銀行、証券取引、決済システムなど)が含まれます。

これらのインフラが整備されていることで、企業はスムーズに物資を輸送し、情報を共有し、効率的な取引が可能となり、経済全体の活性化が促進されるのです。

経済インフラは企業の生産性向上や新たな事業展開を支え、持続的な成長を実現するための土台ともいえるでしょう。

産業インフラ

産業インフラとは、産業活動を支え、企業が効率的かつ安定して生産・流通を行うために必要な基盤やシステムを指します。

これには、工業用地や工場施設といった物理的な設備だけでなく、物流インフラ(道路、鉄道、港湾など)、エネルギー供給(電力、ガス、水道など)、通信設備(インターネット、データセンターなど)、さらに法律や規制といった制度的な枠組みも含まれます。

これらの産業インフラが整備されていることで企業は生産活動を効率的に行うことができ、また安定した供給体制を構築することが可能になるのです。

まとめると、産業インフラは地域経済や国全体の競争力を高め、産業の持続的な発展を支える重要な役割を果たしています。

制度インフラ

制度インフラとは、社会や経済活動が安定して機能するために整備されている法律や規則、制度的な枠組みのことを指します。

これには、法制度(憲法、民法、商法など)、行政制度(税制、社会保障、規制監督機関など)、経済制度(金融システム、雇用制度、契約法など)が含まれます。

制度インフラは、企業や個人が安心して活動できる環境を提供し、公正な取引や社会の秩序を維持するために欠かせない基盤です。

例えば、適切な規制や契約法が整備されていることで、企業間取引の信頼性が確保され、金融制度によって経済活動が円滑に行われるようサポートされています。

制度インフラは、社会の安定や経済の発展を長期的に支える重要な役割を果たしているといえるでしょう。

自然インフラ

自然インフラとは、自然の生態系や地形が持つ機能を活用し、人間社会の生活や経済活動に貢献するもののこと。

これには、森林、河川、湿地、海洋、土壌などが含まれ、これらの自然環境が、気候調整、水の浄化、生物多様性の保全、洪水や土砂災害の緩和など、多様な生態系サービスを提供しています。

例えば、森林は二酸化炭素を吸収し温暖化を抑制する役割を果たし、湿地は水質の浄化や洪水防止に寄与します。

こうした自然インフラを適切に保護・管理することは、人工のインフラ設備では代替できない恩恵を生み出し、持続可能な社会の実現に不可欠です。

また、自然インフラを活用することにより、コスト削減や環境負荷の軽減が図られ、地域社会のレジリエンス(回復力)向上にもつながります。

社会インフラはどうして必要?

皆さんが朝目覚め、まだ暗ければ電気を点け、トイレに行き、用を足した後は水を流すことでしょう。

学校へ通う際は道を通り、鉄道やバスを利用される方も少なくないでしょう。また、最近の常識でいうならスマートフォンも手放せません。

このように、私たちが普段から当たり前のように生活する上で、必ず何らかの形でインフラが関わっているのです。

生活の場面から少し離れると、食料品、石油、製品を輸入し、また日本のものを輸出するには、港や空港が必要不可欠です。

河川堤防など、我々の身を守る防災関係の社会インフラも多々存在します。社会インフラは言い換えれば、「みんなが使う、みんなのもの」といえるでしょう。

直近の例では、2024年1月の能登地震で道路や水道などの社会インフラが損傷し、生活が困難な状態となったニュースは記憶に新しいでしょう。

普段はその存在をあまり感じないかもしれませんが、機能が止まって初めてその有難みを強く感じるのが社会インフラなのです。

社会インフラの老朽化問題とは?

身近な社会インフラの代表ともいえる橋を想像してみてください。鉄(鋼)で出来た橋は塗装が剥がれると錆びてきます。

コンクリートで出来た橋は、時間とともにひび割れができ、そこから雨水などが侵入して中の鉄筋までが錆びてきます。人工物である橋などのインフラは厳しい自然環境の中で、ゆっくりではありますが、確実に傷んでくるのです。

日本の高度成長期に作られた東海道新幹線や東名高速道路は建設されてから60年が経過しています。人間と同じで老化するので、適宜補修し、場合によっては作り替えなければなりません。橋を作り替える間、代わりの橋を作っておかないと向こう側に渡る手段がなくなってしまいます。

とはいえ、代わりの橋を架けるのにも時間と労力がかかるのは想像に難くないでしょう。このように、社会インフラの老朽化問題は様々な難しい問題を含んでいるのです。

社会インフラの課題を解決する方法とは?

先述した社会インフラの問題を解決するには、そもそも老朽化が進まないように適切な維持管理を施すことが何よりも重要です。

とはいえ老朽化を完全に止めることはできないので、錆びたら錆をとって再塗装する必要があるでしょう。

しかし、地面の下に埋まっている上下水道など、痛み具合が見えないものも多いため、損傷を正確に把握するためには地上から電磁波を送るなどの最新の損傷検知技術が必要になります。また、損傷を効率よく直す技術も必要でしょう。

我が国の社会インフラの総額はざっと1,000兆円分あるとも言われています。あまりにも大きな額なので想像がつかないと思いますが、それだけ膨大な量ということです。

悪いところを見つけ、それを直すにも多額の費用が発生します。電気や鉄道といった使った分に応じて使用料を徴収する社会インフラは料金に転嫁できますが、道路は基本的に無料で、河川堤防や防波堤などの防災関連施設では料金をとれません。

これらを維持するには税金に代表される公的資金の投入が不可欠ですが、国や県などの自治体の厳しい財務状況の中で国民の方々に納得していただくことが必要になるなど、新たな課題の種ともなるのです。

社会インフラに携わる仕事や業種は?

社会インフラに携わる仕事や業種としては、電力・ガスなどのエネルギー企業、鉄道、上下水道などを保有する公的企業、国、県、市町村などの社会インフラ部門が挙げられます。

上記は社会インフラに直接的に関わっている会社や業種であり、インフラ関連施設を建てる建設業、設計するコンサルタント、材料を提供する鉄鋼業、セメント会社などの民間企業も社会インフラには間接的に関わっています。

城西大学の社会インフラに関する教育の特徴

経済、現代政策、経営の文系3学部は就職先から見ても社会インフラに関係する企業、公的機関に就職する人が多いです。

特に現代政策、経営の2学部は地域を対象に、各々その政策やマネジメントに関する科目が多く用意されています。

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まとめ

社会インフラは対象範囲が極めて広く、関係する学問分野は非常に多く、多岐にわたるのが特徴です。

関連する業態も公的な組織から民的なものまで、とにかく幅が広いです。地域や国を守り,その成長の基礎になり、皆さんの身近にあるのが社会インフラです。

城西大学で社会インフラについて学んだ方は、その後様々な場面で活かすことができるでしょう。

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この記事を書いた人

藤野 陽三

  • 職名:学長
  • 研究テーマ:土木工学/地震/構造工学/橋梁管理/構造ヘルスモニタリング

学位・経歴

  • 1972年 東京大学工学部土木工学科卒業
  • 1974年 同 修士課程(土木工学)修了
  • 1976年 ウォータール大学(カナダ)博士課程修了(Doctor of Philosophy)
  • ウォータール大学博士研究員、東京大学地震研究所助手、筑波大学構造工学系助手・講師を経て、
  • 1982年 東京大学工学部助教授
  • 1990年 同 教授
  • 2013年 東京大学名誉教授
  • 2014年 横浜国立大学先端科学高等研究院上席特別教授
  • 2020年4月 城西大学学長(現在に至る)横浜国立大学名誉教授(現在に至る)
  • 2022年4月 城西短期大学学長(現在に至る)
  • 2023年12月 学校法人城西大学理事長 就任

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