歌川国政

三代目市川八百蔵の梅王丸

寛政8年(1796)
大判錦絵
「墨と華やかな朱のコントラスト、格子柄と肥痩のある衣紋線が画面にリズムを与え、役者が見栄を切る一瞬が大胆に表現される。本図は寛政八年七月都座で上演された「菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)」車引に取材した作品で、海模様の衣裳から梅王丸とわかる。松王丸、桜丸とともに大首絵三枚組の一枚。半身像の大首絵をさらに切り取った大顔絵とも呼ばれる構図で、豊国風でありながら迫力ある独自の似顔表現が創り出されている。歌川国政は写楽同様、突如高価な大判役者絵を出版し浮世絵界に登場。作画期は寛政七年からの約一〇年間と短いが、役者の個性を描きだす非凡な才で、師の豊国とともに役者絵黄金期の一翼をになった。

TOP