このたび、城西大学水田美術館におきまして「橋本博英展」を開催します。
橋本博英(1933-2000)は、確かなデッサン力を基に、色彩の対比調和と、秩序立てた構図で対象を画面の中に再構築させる絵画表現を開拓し続けた洋画家です。
幼少期より絵を描くことが好きだった橋本は、画家への道を志します。東京芸術大学で油絵を学んだ後、グループ展や個展などで作品を発表して注目を浴び、具象画家としての地位を築き上げていきます。一方で、アンフォルメルや抽象絵画をよしとする風潮が広がる日本洋画界に戸惑いも感じていました。その中でフランス留学から帰国した進藤蕃(しんどうしげる)、笠井誠一(かさいせいいち)らとの出会いは大きな転機となります。アカデミズムの伝統的な絵画表現を吸収した彼らから刺激を受けた橋本は、1967年、68年と二度のフランス留学を果たし、デッサンの重要性、色彩やコンポジション(構成)の理論といった西洋の伝統的絵画を学びます。
帰国後、自らの進むべき道筋を見出した橋本は、特に色彩へのこだわりを持ち、輝きを放つ色を画面に表現しようとしました。そして、身近な日本の自然風景から心揺さぶる空間を描き出すことに自らの絵画世界を求め、近代日本風景画においてひとつの境地を示しました。
このたびの展覧会では、学校法人城西大学が所蔵・管理する作品と個人所蔵の作品あわせて36点を前期・後期に分けて展示し、橋本画業の変遷をご紹介します。前期では1960年代から80年代の作品により、画風模索から確立していくまでの過程を、後期では画風が確立され、より洗練していく90年代から晩年の作品をご覧いただきます。西洋油彩画の伝統を守りながら新たな造形表現を目指し、「永遠に命ある作品を描きたい」と求め続けた画家の光輝く色彩の世界をお楽しみください。