情報科学研究室
教員 | 寺前 裕之(教授) 工学博士 |
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略歴 | 1979年京都大学工学部卒、1984年京都大学大学院工学研究科修了(福井謙一研究室)、コロラド大学ボールダー校visiting fellow、NTT物性科学基礎研究所主任研究員等を経て、2004年4月より城西大学理学部化学科教授 |
担当科目 | (学部)物理化学I、情報科学I、量子化学、物理化学実験、物質・情報科学特論 (大学院)情報科学特論、量子化学特論 |
専門分野 | 情報科学、量子化学、計算化学、ケモインフォマティクス |
所属学会 | 日本化学会、アメリカ化学会、日本コンピューター化学会、分子科学会 |
院生 | 1名 |
4年生 | 3名 |
居室 | 23号館633号室(寺前)、634号室(学生)、635号室(実験室) |
大学研究ナビ | 情報科学研究室ホームページ |
研究内容
量子化学に基づく非経験的分子軌道法や高次元アルゴリズムに基づく分子動力学法といった手法を用いた分子の機能や物性の解析が中心的研究テーマである。今年度からは機械学習の手法も加えて分子の性質や、化学反応に関する様々な問題についてアプローチを行っている。
最近の研究例を以下に紹介する。
2016年度より2018年度まで、「DNA導電メカニズム解明に向けた塩基配列と電子状態の関係解明のための理論的研究」について科研費を獲得した。この科研費により、6-31G基底を用いたab initio分子軌道法によりDNAモデルのフェルミレベル近傍の局所状態密度計算ならびにエネルギーバンドの計算を行った。さらに得られた結果を周期境界条件並びに回転対称性を利用した結晶軌道法によるエネルギーバンド計算の結果と比較した。DNAの伝導性に関してはグアニンが他の塩基よりも重要な役割を果たしていることがわかった[1]。
酸化ストレスは、パーキンソン病やアルツハイマー型認知症などの神経変性疾患や、虚血性脳障害の発症・進展に深く関与していることが知られている。近年、この酸化ストレスの軽減を目的として、抗酸化物質の神経保護作用が注目されている。フェルラ酸(FA)は比較的強い抗酸化作用を示すことが明らかになっている。本学薬学部の坂本らはFAよりも高い効果を示しかつ毒性の低いFA誘導体の探索を目的として種々の置換基を導入したFA誘導体を合成し、フリーラジカル消去能の測定を行い、消去能は大きく置換基に依存することを発見した。本研究では50%のDPPHフリーラジカル消去濃度(IC50)を、FAとその誘導体のフェノール性水酸基から水素を取ったラジカルの分子軌道エネルギーのみで予測出来ることを機械学習を用いて示すことに成功した[2]。
フェルラ酸以外については、BZP系抗不安薬の抗痙攣性の強さ、また抗HIV薬であるADAMSのEC50値について分子軌道エネルギーのみで予測が行えることを示すことができた。
以上のように薬の効き目のような複雑な過程について予測できるのであるから、より簡単な物性についても予測可能かもしれないという考えにより、テストケースとして、2原子分子の核間距離および主に異核2原子分子の双極子モーメントについても分子軌道エネルギーによる機械学習を行ったところ予測可能であることを発見した。ただしこれは対象とする分子が数少ないため、学習および予測に多くの点を取ることができなかった。
そこで、さらに分子の基本的な物性である、融点、沸点、エントロピーなどについても分子軌道エネルギーのみによる機械学習を試みたところ、やはり予測可能であることを発見したため、多くの分子について計算を行っているところである。
[1] Ab initio electronic structure calculation of polymononucleotide, a model of B-type DNA, Hiroyuki Teramae, Yuriko Aoki, AIP Conference Proceedings, 2040, 020013 (2018); https://doi.org/10.1063/1.5079055
[2] 寺前 裕之, 玄 美燕, 山下 司, 高山 淳, 岡﨑 真理, 坂本 武史,” 分子軌道計算と機械学習によるフェルラ酸の抗酸化作用の研究”, J. Comp. Chem. Jpn, 18(5), 211-213 (2019); https://doi.org/10.2477/jccj.2019-0034(日本コンピュータ化学会秋季年会2019年精選論文特集選出)
最近の研究例を以下に紹介する。
2016年度より2018年度まで、「DNA導電メカニズム解明に向けた塩基配列と電子状態の関係解明のための理論的研究」について科研費を獲得した。この科研費により、6-31G基底を用いたab initio分子軌道法によりDNAモデルのフェルミレベル近傍の局所状態密度計算ならびにエネルギーバンドの計算を行った。さらに得られた結果を周期境界条件並びに回転対称性を利用した結晶軌道法によるエネルギーバンド計算の結果と比較した。DNAの伝導性に関してはグアニンが他の塩基よりも重要な役割を果たしていることがわかった[1]。
酸化ストレスは、パーキンソン病やアルツハイマー型認知症などの神経変性疾患や、虚血性脳障害の発症・進展に深く関与していることが知られている。近年、この酸化ストレスの軽減を目的として、抗酸化物質の神経保護作用が注目されている。フェルラ酸(FA)は比較的強い抗酸化作用を示すことが明らかになっている。本学薬学部の坂本らはFAよりも高い効果を示しかつ毒性の低いFA誘導体の探索を目的として種々の置換基を導入したFA誘導体を合成し、フリーラジカル消去能の測定を行い、消去能は大きく置換基に依存することを発見した。本研究では50%のDPPHフリーラジカル消去濃度(IC50)を、FAとその誘導体のフェノール性水酸基から水素を取ったラジカルの分子軌道エネルギーのみで予測出来ることを機械学習を用いて示すことに成功した[2]。
フェルラ酸以外については、BZP系抗不安薬の抗痙攣性の強さ、また抗HIV薬であるADAMSのEC50値について分子軌道エネルギーのみで予測が行えることを示すことができた。
以上のように薬の効き目のような複雑な過程について予測できるのであるから、より簡単な物性についても予測可能かもしれないという考えにより、テストケースとして、2原子分子の核間距離および主に異核2原子分子の双極子モーメントについても分子軌道エネルギーによる機械学習を行ったところ予測可能であることを発見した。ただしこれは対象とする分子が数少ないため、学習および予測に多くの点を取ることができなかった。
そこで、さらに分子の基本的な物性である、融点、沸点、エントロピーなどについても分子軌道エネルギーのみによる機械学習を試みたところ、やはり予測可能であることを発見したため、多くの分子について計算を行っているところである。
[1] Ab initio electronic structure calculation of polymononucleotide, a model of B-type DNA, Hiroyuki Teramae, Yuriko Aoki, AIP Conference Proceedings, 2040, 020013 (2018); https://doi.org/10.1063/1.5079055
[2] 寺前 裕之, 玄 美燕, 山下 司, 高山 淳, 岡﨑 真理, 坂本 武史,” 分子軌道計算と機械学習によるフェルラ酸の抗酸化作用の研究”, J. Comp. Chem. Jpn, 18(5), 211-213 (2019); https://doi.org/10.2477/jccj.2019-0034(日本コンピュータ化学会秋季年会2019年精選論文特集選出)
昨年度の卒業研究題目
- 分子軌道エネルギーを利用した機械学習による向精神薬の最大血中濃度到達時間(Tmax)及び体内半減期(T1/2)の予測
- 分子軌道エネルギーを用いた機械学習によるフェルラ酸類の抗酸化能力予測
- 分子軌道エネルギーを説明変数とした機械学習における沸点・融点の予測
最近の研究業績
のいずれかをご覧ください。