第1回 城西大学 数理応用セミナーを開催しました
2024年11月29日、第1回城西大学数理応用セミナーを東京紀尾井町キャンパスにて開催しました。
城西大学数理応用セミナー
目的:
数理科学と応用数学に関わるさまざまに話題について, 最新の研究成果を共有するとともに幅広い専門分野を通した情報交換を目的とします.学外からの参加も大いに歓迎します.
第1回城西大学数理応用セミナー
日時: 2024年11月29日(金)
16:00 - 17:00 森田善久氏
17:00 - 18:00 降籏大介氏
18:00 - 20:00 情報交換とフリーディスカッション
題目: ロジステック増殖とフラックス制限のあるKeller-Segelモデルにおけるフロント進行波とパルス定在波
講演者: 森田善久 (龍谷大学科学技術共同研究センター客員研究員,龍谷大学名誉教授)
概要:
対象となるモデル方程式は,バクテリア(E.Coli)集団の挙動を表現するモデルで, 細胞の走化性によるフラックスの強さに制限を入れたKeller-Segelタイプの方程式に,ロジステック増殖を考慮したモデルである.Calvez-Perthame-Yasuda[CPY] (2018) の研究では,走化性応答が跳躍する極限を考えることによって,区分的線形な方程式系に持ち込み,走化性が強くなると速度が逆転する単峰な形状を持つ不安定な進行波を構成している.今回の我々の研究では,走化性応答関数を滑らかなままで走化性物質の拡散係数が小さい場合を考え,走化性の効果が増殖に比べて弱い場合にはFisher-KPPタイプの進行波を,逆の場合には数値的にも確かめられているパルス状の定在波を構成した.証明の鍵となるアイデアは,適当な非線形の変換によって速く変化する変数と遅く変化する変数からなる4変数の微分方程式系に書き直すところにある.これによって幾何学的特異摂動理論が応用でき,特に後者の定在波は,特異なヘテロクリニック軌道を求める問題に帰着される.この研究成果は菅徹氏(大阪公立大学)と安田修悟(兵庫県立大学)との共同研究に基づく.
題目: 構造保存解法の概要と,差分法・有限要素法以外への適用可能性
講演者:降籏大介 (大阪大学D3センター教授, D3センター長)
概要:
われわれが現実問題のモデル方程式として扱う多くの常微分方程式・偏微分方程式には,もとの問題の性質を反映した組成保存性やエネルギー保存性・散逸性などといった様々な大域的性質があります.こうした性質は,エネルギー関数と状態関数が変分構造を介してつながっているなどの数学的な背景によって理解できます.これを方程式の数学的構造と呼び,数値計算においてもこの構造を離散的に再現することで数値計算に様々なメリットをもたらそうとする数値解法を「構造保存数値解法(structure-preserving numerical method」と呼んだりします.数学的構造の多くは上に述べたように(計算過程として微分と積分から構成される)変分構造などから構成されるため,構造保存数値解法の研究は,時空間格子上で微積分を離散化してそこに矛盾のない離散計算体系を用意し離散化された変分計算を実現するという形で成されてきました.つまり,差分法や有限要素法,有限体積法といった数値解法がベースになって発展してきたのです.本講演では,こうした発展をしてきた構造保存数値解法の概要について,理解しやすい差分法の例などを通じてお伝えしたいと思います.またその一方,流体問題などを中心に粒子法と呼ばれる数値計算手法がよく使われています.流体の挙動を粒子の移動によって近似する粒子法の方法論は,時空間領域での微積分をベースとする構造保存数値解法の方法論の適用が難しく,粒子法での構造保存数値解法については広く研究が進んでいるとは言い難い状況でした.しかし,粒子法での構造保存についても粒子の位置によって空間に仮想の格子を考える手法などの導入により,少しずつ進展があります.本講演ではこうした近年の発展についてもご紹介します.
世話人: 井手貴範, 栄伸一郎, 小林康明, 清水優祐, 杉谷宜紀, 中村(荻原) 俊子, 安田英典
数理科学と応用数学に関わるさまざまに話題について, 最新の研究成果を共有するとともに幅広い専門分野を通した情報交換を目的とします.学外からの参加も大いに歓迎します.
第1回城西大学数理応用セミナー
日時: 2024年11月29日(金)
16:00 - 17:00 森田善久氏
17:00 - 18:00 降籏大介氏
18:00 - 20:00 情報交換とフリーディスカッション
題目: ロジステック増殖とフラックス制限のあるKeller-Segelモデルにおけるフロント進行波とパルス定在波
講演者: 森田善久 (龍谷大学科学技術共同研究センター客員研究員,龍谷大学名誉教授)
概要:
対象となるモデル方程式は,バクテリア(E.Coli)集団の挙動を表現するモデルで, 細胞の走化性によるフラックスの強さに制限を入れたKeller-Segelタイプの方程式に,ロジステック増殖を考慮したモデルである.Calvez-Perthame-Yasuda[CPY] (2018) の研究では,走化性応答が跳躍する極限を考えることによって,区分的線形な方程式系に持ち込み,走化性が強くなると速度が逆転する単峰な形状を持つ不安定な進行波を構成している.今回の我々の研究では,走化性応答関数を滑らかなままで走化性物質の拡散係数が小さい場合を考え,走化性の効果が増殖に比べて弱い場合にはFisher-KPPタイプの進行波を,逆の場合には数値的にも確かめられているパルス状の定在波を構成した.証明の鍵となるアイデアは,適当な非線形の変換によって速く変化する変数と遅く変化する変数からなる4変数の微分方程式系に書き直すところにある.これによって幾何学的特異摂動理論が応用でき,特に後者の定在波は,特異なヘテロクリニック軌道を求める問題に帰着される.この研究成果は菅徹氏(大阪公立大学)と安田修悟(兵庫県立大学)との共同研究に基づく.
題目: 構造保存解法の概要と,差分法・有限要素法以外への適用可能性
講演者:降籏大介 (大阪大学D3センター教授, D3センター長)
概要:
われわれが現実問題のモデル方程式として扱う多くの常微分方程式・偏微分方程式には,もとの問題の性質を反映した組成保存性やエネルギー保存性・散逸性などといった様々な大域的性質があります.こうした性質は,エネルギー関数と状態関数が変分構造を介してつながっているなどの数学的な背景によって理解できます.これを方程式の数学的構造と呼び,数値計算においてもこの構造を離散的に再現することで数値計算に様々なメリットをもたらそうとする数値解法を「構造保存数値解法(structure-preserving numerical method」と呼んだりします.数学的構造の多くは上に述べたように(計算過程として微分と積分から構成される)変分構造などから構成されるため,構造保存数値解法の研究は,時空間格子上で微積分を離散化してそこに矛盾のない離散計算体系を用意し離散化された変分計算を実現するという形で成されてきました.つまり,差分法や有限要素法,有限体積法といった数値解法がベースになって発展してきたのです.本講演では,こうした発展をしてきた構造保存数値解法の概要について,理解しやすい差分法の例などを通じてお伝えしたいと思います.またその一方,流体問題などを中心に粒子法と呼ばれる数値計算手法がよく使われています.流体の挙動を粒子の移動によって近似する粒子法の方法論は,時空間領域での微積分をベースとする構造保存数値解法の方法論の適用が難しく,粒子法での構造保存数値解法については広く研究が進んでいるとは言い難い状況でした.しかし,粒子法での構造保存についても粒子の位置によって空間に仮想の格子を考える手法などの導入により,少しずつ進展があります.本講演ではこうした近年の発展についてもご紹介します.
世話人: 井手貴範, 栄伸一郎, 小林康明, 清水優祐, 杉谷宜紀, 中村(荻原) 俊子, 安田英典