私が医療に携わりたいと思ったきっかけは、小学生のときに母親が病気になったことです。当時、医療に関する情報は限られており、身近に医療関係者もいませんでした。普段寡黙な父から「母親は死ぬかもしれない。覚悟しておけ」と言われ、どうにもならない恐怖に襲われた経験から、身近に医療関係者がいたほうが良いのではないかと思うようになりました。
最初は医師を志していましたが、学業が思うようにいかず、城西大学に入学しました。大学時代はがむしゃらに学生生活を送りましたが、薬学科だけでなく薬科学科や医療栄養科、そして経済学部など、医療以外の学部の方とも交流できたことは、今では大きな財産となっています。
【キャリアの始まりと独立】
学生時代から関わりのあった株式会社エフケイ取締役の早津大祐さんの会社で最初に働かせていただき、当時薬局に配属された時のエース薬局豊玉店の薬局長田辺真さんには、同じ城西大学卒ということで良くして頂きました。私自身の夢についても馬鹿にせず、薬局のことや患者さんへの対応、医師との連携方法など、薬局の基礎を教わりました。また、早津さんからは、大学生の頃から様々なイベントに呼んでくださり、経営のことや人との繋がりの大切さを学び、「患者さんに寄り添った薬局」を作りたいと感じて独立し、自分の会社を設立しました。
【経営の紆余曲折】
最初から会社の経営が順調にいったわけではありません。実際、今の薬局は3店舗目です。最初の店舗は開業前日に聞いていた話と違うことに気づき、開業初日に閉業届けを出すことになりました。
次に、別の薬局を引き継ぐ形で開業しましたが、出身地でないことや県民性を理解しきれていなかったため、対人トラブルが発生し、他の経営者に引き継ぐ形で辞めることになりました。この経験から、地域を理解し、地域密着の重要性を強く感じました。
【現在の事業】
現在、会社としては3つの部門で経営しています。
1.地域の保健室としてのアトム薬局(和光市新倉)
「患者さんに寄り添った薬局」として、お薬のお渡し後も含めたサポートを行っています。
2.薬局の独立サポート
苦い経験から得た知識をもとに、独立前に知っておいたほうが良いことをサポートしています。具体的には、独立開局の相談から案件の紹介、統計による地域分析、経営的なことも含めた開業後のサポートまで行っています。
3.公式LINE開設サポート
コロナ禍で患者が激減し、廃業の危機に瀕していたときにLINEアカウントを開設し、患者来局数が増え経営の立て直しに繋がりました。4000人以上の友達登録されたノウハウを活かし、薬の投薬後のサポート方法などを提供するLINEアプリをプログラミングの会社と経営者としても頼れる城西大学の先輩である株式会社mexaswolf永森 裕治さんの会社の3社で共同開発しています。
【地域医療への貢献】
会社の経営の他にも、地域の医療に貢献できるよう、朝霞地区薬剤師会としても活動しています。薬剤師の若手を集めた会を定期的に開催し、城西大学の生理学研究室で加園 恵三先生が行っていた症例検討会をもとに、地域の薬剤師が行った薬局ヒヤリハット、薬のフォローアップ症例の共有などを実施しています。
城西大学には様々な学部があり、医療学部以外の他学部との交流ができる環境が整っています。この大学時代にした他学部との交流は、現在の医療人として異なる視点で物事を見るきっかけとなりました。そして、城西大学薬学部出身の先輩や後輩とのつながりは現在でも様々な場面で役立っております。さらに、生理学研究室での専門的な視点から物事を見る経験は、私のキャリアにおいて大きな支えとなっています。
これからも、経営者としても薬剤師としても地域医療に貢献できるよう頑張って参ります。
江口 武幸(えぐち たけゆき)プロフィール
2016年 城西大学 薬学部薬学科 卒業
2016年 株式会社エフケイ 入社
2017年 株式会社エフケイ 退社
2017年 株式会社ヘルスネクト設立
2018年 アトム薬局 開局