2次元(平面内)の流体運動を支配する連続の式と非圧縮性ナヴィエ・ストークス方程式を差分法で離散化し,流れ関数−渦度法に基づくシミュレーション・ソフトをC言語を用いて作成します.さらに作成したソフトウェアを用いて独自の流れシミュレーションを行い,流れの速度や圧力などをOpenGLを用いたコンピュータ・グラフィクスによって可視化します.
NASAの火星ヘリコプターIngenuityの2021年4月19日の初飛行を再現するシミュレーションです.Ingenuityはローターの回転によって,黒色で示された下降流を発生させて離陸し,高度3mでホバリングした後に着陸します.画面左側には飛行時間が,右側には高度と垂直速度,およびローターの吹出速度が表示されています. この流れのレイノルズ数は520,フルード数は0.67です.なお,本シミュレーションは軸対称近似された3次元支配方程式を用いて実行されています.
円柱型空気清浄機による直径3m,高さ3mの円筒空間の空気清浄シミュレーションです.灰色で示された空気清浄機は側面の下半分から黒色で示された汚れた空気を吸い込み,上面から白色で示されたきれいな空気を速度1.5m/sで吹き出します.15分間の運転で空間内はほぼ白色になり,空気清浄が完了します. この流れのレイノルズ数は30,000,ペクレ数は18,000です.なお,本シミュレーションは軸対称近似された3次元支配方程式を用いて実行されています.
レイノルズ数が200の場合の,円柱まわりの流れのシミュレーションです.赤色で示された円柱に左から一様流が当たると,円柱の上側では白色で示された時計回りの渦が発生し,下側では黒色で示された反時計回りの渦が発生します.これらの渦は後方に伸びていき,やがて円柱から放出されます.このレイノルズ数では交互かつ規則的に放出されるカルマン渦が見られ,その放出周波数は一様流の速さと円柱の直径の比で決まります.
直径0.3m,体温40℃の20羽のペンギンが気温-20℃,風速10m/sの環境で集団を作る(ハドリング)シミュレーションです.ペンギンの体温で温められた黒色の空気がハドルの隙間や風下に流れていきます.このときペンギン同士が接触していなくても,体表面の温度勾配が小さくなるため,ペンギンの平均熱損失は単独の場合の半分程度に減少します. この流れのレイノルズ数は2.6×105,プラントル数は0.7です.
十字形状で幅0.3m,質量2.5kgのドローンが床面から離陸し,15秒間飛行して再び着陸するシミュレーションです.ドローンは左右のローターから垂直に吹き出す流れによって離陸した後,上下のローターから吹き出す流れによって水平移動します.画面左側にはドローンの水平速度と垂直速度が,右側にはローターの水平吹出速度と垂直吹出速度が表示されています. この流れのレイノルズ数は2.7×103,フルード数は0.4です.
灰色で示された水蒸気を含む入浴後の浴室内空気(30℃)を天井から換気するシミュレーションです.換気を開始すると,黒色で示された水蒸気を含まない外気(20℃)が左下の給気口から浴室内に入ってきます.白色で示された浴槽(40℃)を除く浴室内がすべて黒色になると,換気が完了したことになります.この流れのレイノルズ数は2.7×104,グラスホフ数は2.4×1010,ペクレ数は4×104です.