新規芳香族化合物である「アズレンおよびトロポン類」は、その構造的特徴から、高度な機能性・生理活性が期待される。 特にナフタレンの構造異性体でもあるアズレンは,C10H8のような簡単な炭化水素にもかかわらず,鮮やかな青色を持つ化合物である。 この特異的な構造に興味を持ち,基礎研究の一端として、当研究室では野副法、高瀬・安並法、そして独自に開発したオキサアズレノンとビニールエーテル類などとの反応によるアズレン合成法を用い、従来合成困難であったアズレン誘導体を合成するとともに、それらの応用研究を行っている。
研究は以下のテーマに大別される。
1)新しいアズレン合成法の改良と発展
2)生理活性の期待されるアズレン誘導体の合成 とその薬理活性
3)機能性の期待されるアズレン類の合成
4)アズレンキノンの合成法の改良と発展
一般にクラウンエーテルは,様々な金属と安定な錯体を形成することから多種多様の化合物が合成され,各分野へ応用されている。一方,アズレン環を含むクラウンエーテルの報告例は殆どないことから,ここ数年,アズレノクラウンに興味を持ち,これら化合物の合成をおこなっている。
今年度10種類のN−アルキルアミドアズレン誘導体を合成し,正常細胞3種と癌細胞4種類を用いて細胞傷害活性を測定したところ,毒性が低く,且つ腫瘍選択性が最も高いアミノアズレン類の中で抗がん剤に適している可能性が培養細胞レベルにおいて示唆された。